ホテルのお酒商品開発術|“ここでしか飲めない特別なお酒時間”の提供が滞在満足度向上の秘訣

ホテル運営において、「他施設と差別化できる独自の宿泊体験を提供したい」と悩むことはないでしょうか?
ラグジュアリーな空間や上質なサービスだけでは、競争の激しいホテル市場で際立つのは難しくなっています。

そこで注目したいのが、ホテル独自のプライベートブランド(PB)お酒です。
PBお酒は、単なるドリンク提供にとどまらず、「このホテルでしか味わえない特別な体験」を宿泊者に提供し、ブランド価値や売上向上にも寄与する強力な武器となります。

しかし、「なぜPBお酒商品開発はホテルにとって価値があるのか?」「他のPB商品と比べたメリットは何か?」といった疑問を持つ方も多いはず。そこで本記事では以下の内容についてご説明します。

本記事でわかること
  • PBお酒商品がホテルにもたらす3つの価値
  • 顧客が求める体験価値とお酒の深い関係
  • ホテルの特性を活かしたPBお酒商品の体験価値の作り方
  • 売上を最大化するための販売戦略と提供アイデア

「ホテルならではの特別な体験を提供したい方」「宿泊後も続く顧客ロイヤリティを築きたい方」には特に参考になるため、ぜひ最後まで読んでみてください。

目次

ホテル業界で注目が高まる「プライベートブランドお酒」とは?

まず、ホテル業界で言う「プライベートブランドお酒」とは何か、その背景となぜ今注目されているのかを整理します。

プライベートブランド(PB)とは?

プライベートブランド(PB)とは、企業が自社のブランド名で企画・販売するオリジナル商品のことです。

一般には小売業で自社開発の商品(いわゆるストアブランド)を指しますが、ホテル業界においても自社オリジナルの酒類商品を企画・提供するケースが増えています。
例えば、ホテルが酒造メーカーやワイナリー、ブルワリーと協力し、自社ラベルの日本酒・ワイン・ビールを製造してもらい、それを館内で提供・販売する取り組みもPB商品の一種です。要するに、ホテルの名前やコンセプトを冠した“ここでしか買えないお酒”がホテルのPBお酒と言えるでしょう。

ホテルではこれまでもオリジナルの紅茶やジャム、アメニティグッズなど自社ブランド商品を扱う例がありましたが、近年はお酒というカテゴリーで独自商品を持つ動きが広がっています。
自社ブランドのお酒は、宿泊客に特別感を与えるアイテムであり、ホテル独自のストーリーや地域色を反映させやすい商品でもあります。

なぜ今、ホテルでPBお酒が注目されているのか?

近年ホテルでPBお酒が注目される背景には、いくつかの業界トレンドや環境の変化があります。

宿泊体験の差別化競争

旅行者のニーズが多様化し、「その土地・その施設でしか味わえない体験」を求める傾向が強まっています。
特にコロナ禍後の観光需要回復期において、各ホテルは他施設との差別化に力を入れており、オリジナルのお酒は「ここだけの特別な体験」を提供する有力な手段です。

また、国内のクラフトビールや地酒ブームも相まって、限定感のあるお酒は集客の目玉になり得ます​。

ブランド戦略と収益多角化

ホテルは宿泊だけでなく物販や飲食での収益拡大を図る必要性が高まっています。
PB商品は他社との差別化になるだけでなく、自社ブランド価値を高めるマーケティング手法でもあります。
特にお酒は単価が高く利益率も見込みやすいため、オリジナル商品で収益を上乗せする戦略として注目されています。
宿泊客が記念に購入したり、自宅用・贈答用に追加購入したりすれば、新たな収益源ともなるでしょう。

地域資源の活用とインバウンド需要

地域の酒蔵やブルワリーとのコラボによるPBお酒は、その土地ならではの魅力を演出できます。
地産地消や地域文化の発信という観点からも評価され、地域連携による観光振興にも寄与します。
特にインバウンド(訪日外国人)旅行者にとって、ホテルオリジナルのお酒は日本文化の記念品として映り、満足度向上や話題作りにつながります。

実際、ヒルトン名古屋では海外ゲストへのおもてなしとして、地元酒蔵と協力したオリジナル日本酒をノベルティ提供した事例もあります。

このような要因が重なり、現在ホテル業界でPBお酒への関心が高まっているのです。それでは具体的に、ホテルがプライベートブランドのお酒を導入することで得られるメリットを見ていきましょう。

PBお酒を導入する3つのメリット

ホテルが自社ブランドのお酒を導入することには、大きく分けて以下の3つのメリットがあります。

①宿泊体験の差別化とブランディング強化

PBお酒は唯一無二の宿泊体験を提供し、ホテルのブランド力を高める武器になります。他では味わえないオリジナルドリンクを提供することで、宿泊客に特別な体験を演出できます。

例えばチェックイン時のウェルカムドリンクに自社開発のスパークリングワインを振る舞えば、到着早々にホテルの世界観を印象付けることができます。バーやレストランでホテルオリジナルのカクテルや地酒を出せば、「このホテルに泊まって良かった」と感じる思い出の一コマとなるでしょう。

さらにPBお酒のボトルやラベルにホテル名やロゴが入っていれば、ブランディング効果も絶大です。
お客様がそのボトルを手に取るたびにホテルのことを思い出してもらえますし、知人へのお土産にすればホテルの宣伝にもなります。ユニークなストーリーやコンセプトが込められたお酒であれば、ホテルのブランドイメージを強化し、リピーター獲得にもつながります。

②売店・ルームサービスでの物販強化と収益化

PBお酒はホテル内の物販商機を広げ、収益アップに寄与します。
館内のショップや売店で自社ブランドのお酒を販売すれば、宿泊客がここでしか買えない土産として購入してくれる可能性が高まります。特に旅行中は記念品や限定品に財布が開きやすいため、オリジナル酒類のような魅力的な商品は売上増が期待できます。ミニボトルや飲み切りサイズの商品であれば、気軽に購入できる価格帯で展開することも可能です。

また、ルームサービスやミニバーでの提供も収益化のポイントです。
客室内のミニバーにホテルオリジナルのビールやウイスキーが入っていれば、物珍しさから注文が増えるかもしれません。通常、ミニバー商品やルームサービスのドリンクは割高でも利用されますが、自社ブランド品であれば高価格でも納得感を与えやすく、利益率の確保につながります。
さらに宴会やウェディングなどで記念のオリジナル酒を提供すれば、追加収入と顧客満足度向上の両立が図れるでしょう。

③SNS映えやギフト需要の取り込みによる話題性

SNS全盛の時代、見た目に特徴あるPBお酒は「映える」コンテンツとして拡散効果が期待できます。
おしゃれなラベルデザインやユニークなボトル形状、ストーリー性のある商品は、ゲストが思わず写真に撮ってSNSに投稿したくなるものです。「#ホテル名 #オリジナル日本酒」といったハッシュタグと共に発信されれば、無料の宣伝となり、新たな顧客の興味を引くでしょう。

また、自社ブランドのお酒はギフト需要も取り込めます。
宿泊記念のお土産としてだけでなく、地元の方がホテルに足を運んで購入したり、オンラインショップで販売して遠方のファンに届けたりする展開も可能です。限定生産やシリアルナンバー入りの高級ボトルなど希少性を演出すれば、コレクターズアイテム的な話題性も生まれます。結果として、「○○ホテルのオリジナル酒がすごいらしい」と業界内外で話題になれば、ホテル全体の注目度アップにもつながります。

以上のように、PBお酒の導入は①宿泊体験の質向上から②収益増、③話題作りまで多面的なメリットをもたらします。ただし、それらのメリットを最大化するには、商品企画の段階で綿密な戦略設計が必要です。次の章では、PBお酒を成功させるための企画ポイントを見ていきましょう。

成功するPBお酒の企画ポイントとは?

PBお酒導入を成功させるには、ホテルのコンセプトや顧客ニーズに合った商品設計が欠かせません。企画段階で押さえておきたいポイントを3つ紹介します。

ホテルコンセプトに合った味・デザイン設計

まず重要なのは、ホテルのコンセプトやテーマにマッチした味わいとデザインにすることです。

例えば
  • 提供するお酒の種類や味の方向性をホテル・宿のキャラクターに合わせる
    • ラグジュアリー路線のホテル→繊細で高級感のある味わいの日本酒やワイン
    • カジュアルな雰囲気のホテル→爽やかで飲みやすいクラフトビール
  • ボトルデザインやラベルをホテル・宿のキャラクターに合わせる
    • 和風テイストの旅館→和紙風のラベルや伝統柄の意匠を施す
    • モダンなシティホテル→スタイリッシュで都会的なデザインにする

実際、シャングリ・ラ 東京では高級感あふれるラグジュアリーホテルのイメージに合わせ、石川県の老舗酒蔵と協力したオリジナル日本酒を開発しています​。

このように商品の味と見た目でホテルの世界観を表現することで、お客様に強い印象を与えることができます。

ターゲットに刺さるパッケージ・ネーミング

PBお酒のパッケージデザインやネーミングはマーケティングの要です。想定するターゲット客層の心に刺さる工夫を凝らしましょう。

例えば
  • パッケージデザイン
    • 若いカップルや女子旅が多いホテル→写真映えする可愛いボトルや洗練されたラベルデザイン
    • ビジネス層や年配富裕層が主なホテル→格式を感じさせる落ち着いたデザインや書道調のラベル
  • 商品名
    • ホテル名や土地の名前を入れて分かりやすく「○○エール」「△△ラガー」「○○の舞(日本酒名)」のようにする
    • ホテルのストーリーにちなんだ独自の名前を付ける

京王プラザホテルでは、自社初のオリジナルビールをホテルの親しみやすさを込め「ひろばゑーる」と命名しました。

ユニークで覚えやすいネーミングは話題性を高めるとともに、ターゲットの興味を引きやすくなります。

客室・売店・ギフトなど「使われ方」を想定した設計

PBお酒を企画する際には、その商品がどのシーンで利用・消費されるかを具体的に想定することも成功のポイントです。

例えば
  • 客室内でのウェルカムドリンクやミニバー用
    • →一回で飲み切れる小瓶サイズや栓を開けやすい容器形状が望ましい
  • レストランでグラス提供
    • →大瓶や樽で仕入れて提供コストを抑える方法もあり
  • 売店で土産物として販売する
    • →持ち帰りしやすい箱入りや割れにくいボトル、日持ち期間などにも配慮が必要
  • ギフト用途を狙う
    • →高級感のある化粧箱やセット商品(例:ペアグラス付きセットなど)にすることで付加価値を高める

実際の企画では、「このPB酒はお客様にどんな風に手に取ってもらい、どこで楽しんでもらうか?」をチームでシミュレーションし、その用途に最適化した容量・形状・提供方法を設計しましょう。

さらに、提供シーンと関連して価格設定も重要な設計要素です。客室サービスで無料提供するのか、有料販売するのか、限定品として高価格で売るのかによって、製造コストやパッケージ投資の度合いも変わります。ターゲットや使われ方に見合った価格・品質バランスを見極めることが、PBお酒成功の鍵となります。

ホテルのPBお酒・注目の導入事例

最後に、実際にプライベートブランドのお酒を導入している国内ホテルの事例をいくつか紹介します。競合他社の取り組みから、自社導入のヒントを探ってみましょう。

シャングリ・ラ 東京(ラグジュアリーホテルの日本酒コラボ)

東京・丸の内のシャングリ・ラ 東京では、石川県の酒蔵「農口尚彦研究所」とコラボレーションしたオリジナル日本酒を2025年に発表しました​。

スタッフの「自社オリジナルの日本酒を作りたい」という発案からプロジェクトが始まり、杜氏とともに試行錯誤を重ねて完成させたものです​。複数ヴィンテージの大吟醸酒をブレンドした奥深い味わいで、高級和食レストラン「なだ万」やラウンジで提供されています。ラグジュアリーホテルならではの洗練されたPB酒として、食事とのペアリング提案も含め話題を呼んでいます。

京王プラザホテル:初の自社クラフトビールで話題作り

新宿の京王プラザホテルは、創業以来初となる自社オリジナルクラフトビール「ひろばゑーる」を2024年に開発しました​​。

ビール醸造は茨城県の木内酒造(クラフトビール「常陸野ネスト」で有名)に委託し、ホテルのバーテンダーやソムリエがホップや副原料選びから携わっています。オレンジや桃の香りが楽しめる爽やかなペールエールで、ホテル名の「広場」にちなみ親しみやすさを込めたネーミングとしました​。

館内バーやラウンジで提供され、同ホテル開催のビアフェストで限定販売するなど、イベントと連動した話題作りにも成功しています。

ANAインターコンチネンタルホテル東京(地元酒蔵と米作りから醸す日本酒)

東京都内の大型高級ホテルであるANAインターコンチネンタルホテル東京では、「日本酒応援団」と協働しオリジナル日本酒を造っています。

酒米の一部をホテルスタッフ自ら田植えするところから関わり、島根県の老舗蔵元・竹下本店で醸造された純米酒を特注ラベルのボトルに詰めています​。館内の日本料理店や鉄板焼レストランで提供されており、伝統ある酒蔵との協働による本格的な味わいが特徴です。

「自分たちで米作りから関わったお酒」というストーリーは顧客にも伝わりやすく、同ホテルのブランディング強化につながっています。

庭のホテル 東京:和の副材料を活かしたユニークビール

東京水道橋の庭のホテル東京は、和のテイストを取り入れたオリジナルクラフトビール「庭のビール NIWA BEER」を展開しています。中でも2023年発売の「庭のビール 山葵(わさび)」は、副原料に和ハーブである本わさびを使用した個性的な一品です​。

爽やかな飲み口とほのかな辛味が特徴で、「粋なMade in Tokyoのビール」として宿泊客だけでなく地元ビールファンからも注目されました。和の食事とも相性が良く、館内レストランでの提供やお土産用ボトル販売を通じて、同ホテルの和モダンなブランドイメージを印象付けています。

亀の井ホテル:チェーンホテル統一のオリジナル日本酒

リゾートホテルチェーンである亀の井ホテル(マイステイズ・ホテル・グループ運営)では、チェーン共通のオリジナル日本酒を企画し各施設で提供・販売しています。

東京・青梅の老舗蔵元「澤乃井(小澤酒造)」と提携し、「特別純米」「純米吟醸」2種類のPB日本酒を開発​。300mlの小瓶で提供され、館内レストランで食事とともに楽しめるほか、お土産にも好評です​。

程よい辛口で料理に合わせやすい味わいとフルーティーな香りが特徴で、全国の亀の井ホテル宿泊客に統一ブランド体験を提供しています。チェーン全体で同じPB商品を持つことでスケールメリットを活かし、仕入れやプロモーションを効率化する狙いもあるようです。

以上、国内の様々なホテルが特色あるプライベートブランドお酒を導入している事例を見てきました。高級ホテルからカジュアルホテル、チェーン展開まで、それぞれの強みや地域性を活かしたPBお酒戦略が展開されています。


まとめ:ホテル向けPBお酒商品で宿泊体験とブランド価値を最大化しよう

ホテル業界において、プライベートブランド(PB)のお酒は、単なる飲料以上の価値を宿泊体験にもたらします。本記事では、PBお酒がホテルに与える影響や、消費者が求める体験価値の創造方法、そして具体的な販売戦略について解説してきました。

体験価値を生み出すPBお酒の開発ポイント
  • ラグジュアリー特化
    • 希少性やプレミアム感を重視した原料・デザインで洗練された体験を提供。
  • 地元素材・クラフト要素特化
    • 地域の魅力を伝える素材やストーリーを盛り込み、唯一無二の体験を創出。
  • 和要素・インバウンド客特化
    • 日本らしい味わいや文化を活かし、海外ゲストにも魅力的な商品を展開。

これらの要素とホテルの世界観を統合することで、「その場所、その瞬間だけの特別な体験」が実現します。

販売売上を向上させる戦略
  • ホテル滞在中の即時販売
    • 体験キットやフードペアリングなど、滞在中に「今すぐ欲しい」と思わせる仕掛けを作る。
  • 滞在後のリピート需要獲得
    • オンライン販売やサブスクモデルを用意して、宿泊後も顧客とつながる仕組みを構築。
  • ギフト需要の取り込み
    • 持ち帰りやすいミニボトルやギフトBOXを用意し、「大切な人にシェアしたい」と思われる商品に仕上げる。

PBお酒は、ホテルのブランド価値を高めるだけでなく、宿泊体験を総合的にアップグレードする強力なツールです。中味・パッケージ・ストーリーテリングを一貫させ、さらに滞在中から宿泊後までをカバーする販売戦略を取り入れることで、他ホテルとの差別化を図り、長期的な顧客ロイヤリティを築くことができます。

本記事を参考に、ホテル独自のPBお酒を通じて、宿泊者にとって忘れられない特別な体験を提供してみてください。


株式会社SEAMでは、自社の20〜30代向け低アルコールカクテル商品開発で培った実践的なノウハウ をもとに、ホテル向けPB飲料商品のコンセプト設計支援サービスを提供しています。

私たちは、宿泊体験をアップグレードするPBお酒を作るために、コンセプト設計から開発・クリエイティブ制作・プロモーションまで、ホテルブランドやターゲットに合わせた一貫したサポートを行います。

  • 「ホテルの世界観を反映したPBお酒を作りたいが、どんなコンセプトにすべきかわからない」
  • 「ターゲットのインサイトを深掘りし、心に響く商品を作りたい」
  • 「開発・クリエイティブ・プロモーションまで、一貫してサポートしてほしい」

こうした課題でお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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